研究概要 |
木星デカメートル波のダイナミック・スペクトラム上に現れる斜めの縞状構造モジュレーション・レーンは、Riihimaa(1968)によって発見された。筆者らは、このモジュレーション・レーンが伝搬途中で生じる現象であるという観点からモデルを考え、コンピュータ・シミュレーションを行った結果、観測データと非常に良く一致することを初めて示した(Imai et al.,JGR,1997)。 筆者らのモデルは、木星電波源から放射された電波が、衛星イオの軌道近くを貫く木星の磁力線に沿ってあたかもスダレのように分布するプラズマのスクリーンにより変調を受ける伝搬現象を基本としている。衛星イオの軌道付近における木星の磁力線の構造は、惑星探査機の観測によりすでにモデル化されていることから、木星電波源の位置をパラメータとして、観測されたモジュレーション・レーンの様々な特性とシミュレーションした結果とを比較することができ、電波源の位置や構造を精度良く調べることが可能となる。 この研究においては、広帯域での木星電波のダイナミック・スペクトラムを、日本(高知県、吾川村)、フロリダ大学宇宙電波観測所、ハワイ大学宇宙電波観測所の3地点で同時間帯に観測し、その中に見られる広帯域モジュレーション・レーンの解析を行うことになっている。特に、レーンの曲がり具合は、木星電波源の位置関係と密接に関係していることから、これを集中的に3地点で観測することを目的としている。今年度は、フィンランドのRiihimaaによって観測された木星電波の広帯域木星電波ダイナミックスペクトラムデータを解析した成果をJGRに論文として出版し、今後行う3地点観測における重要な観測パラメータの検討を行った。また、「木星デカメートル波スペクトル中のモジュレーション・レーンのモデルに関する研究」というタイトルで、今井によって京都大学・博士論文(情報学)として研究成果がまとめられた。
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