研究実績の概要は以下の通りです。 1.剪断帯のフラクタル電磁気的特性の解析:現有の岩石誘電率測定器(文部省平成10・11年度科研費を用いて既に購入済み)を用いて剪断変形岩のフラクタル電磁気的特性(岩石誘電率)やTL・カソードルミネッセンス・IRの測定を行い、フラクタル電磁気的特性値と各種断層パラメータ(歪み・移動量・剪断帯の幅)間の相関を求めた。 2.岩石変形実験のデータとの比較解析と剪断変形岩に関する地質応力・歪計の提出:物質の変形特性を扱う微分幾何学の知識を用いて、剪断変形岩に関する天然のフラクタル電磁気的特性データと実験データを整理・解析した。この際に、コンピュータを用いて得られたデータを解析し、剪断変形岩に関する変形の非線形構成則(岩石変形特性の時間的変化)を決定した。さらに剪断変形岩に関する地質応力・歪計・温度換算則・力学的遷移挙動をも含む構成則を確立した。また、求められたフラクタル電磁気特性と岩石変形特性構成則との関係を明らかにした。 3.地殻の応力レベルの見積もりと現実的な剪断帯モデルの提出:剪断変形岩(深部剪断変形岩を含む)のフラクタル電磁気特性から剪断帯の形成条件や形成場(地殻の強度・不均一度・断層の成熟度・深さに伴う剪断帯の広がりなど)について言及し、地質応力・歪計を用いて剪断帯における地殻の応力(強度)・歪レベルの算出をおこなった。また、現実的な剪断帯モデルを提出した。さらに、剪断変形岩のフラクタル電磁気的特性値と岩石変形実験によるデータを用いて、地殻の応力問題や地殻応力場内で形成される剪断帯の三次元的電磁気的構造と地震前兆電磁放射経路を解明した。これらの研究成果をすべて国際会議や国際誌等で公表した。
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