研究概要 |
西南日本弧に見られる地帯構造区分の帯状配列は,フォッサマグナ以東にも連続するが,棚倉構造線で途切れる.しかしながら棚倉構造線の北部(羽越地域)はその位置自体が定かではなく,論争の渦中にある.また当地域に分布する花崗岩類の所属問題も未だに解決していない.一方、筆者らによって当地域からグラニュライト相変成岩ゼノリスが発見されるとともに,羽越地域の花崗岩類との成因関係が示唆されるデータが得られつつあった.本研究は,これまでの研究を踏まえ,羽越地域の所属問題とテクトニクスを明らかにする事を目標とした. 本年度は,澄川地域において変成岩ゼノリスの再サンプリングを行い,新たなザクロ石-菫青石-珪線石片麻岩のサンプルを得る事が出来た.このサンプルの他,以前に発見していたサンプルを含め,薄片記載・EPMAでの分析を行った.この際,設備備品費で購入した反射照明付き偏光顕微鏡が大変役に立った. さらに,泡滝地域の変成岩の全岩化学組成分析,Rb・Sr同位体比の測定を行った.これに先立つ粉砕作業では,消耗品費で購入した,鉄乳鉢と,タングステンカーバイト製の粉砕ジョー・ライナーが有効であった.泡滝地域の変成岩のRb・Sr同位体比の測定結果では,澄川地域の変成岩ゼノリスと同様,足尾帯の岩石とは異なり,羽越地域の花崗岩類を生み出した地殻深部の岩石であることが確かめられたのは重要な成果であった. 今年度は澄川地域の変成岩ゼノリスから発見された,超高温変成作用を意味するスピネル+石英グラニュライトについて公表したとともに,9月に行われた日本地質学会では,当地の地質見学旅行を企画・実行し,関連する研究者と現地で議論する事が出来たのが収穫であった.次年度はさらに化学分析を進めるとともに,飯豊地域の変成岩について研究を進めてゆく予定である.
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