研究概要 |
西南日本弧に見られる地帯構造区分の帯状配列は棚倉構造線で途切れ,東北日本弧には連続しない.しかしながら棚倉構造線の北部(羽越地域)はその位置自体が定かではなく,論争の渦中にある.一方,筆者らによって当地域からグラニュライト相変成岩ゼノリスが発見されたとともに,超高温変成作用や花崗岩類との成因関係が示唆されるデータが得られつつあった.本研究は,これまでの研究を踏まえ,羽越地域の所属問題とテクトニクスを明らかにする事を目標とした. 本年度は,飯豊地域において変成岩の現地調査をおこなった.その際に今回購入したテントはたいへん役に立った.この成果として,この地域から珪線石を含む変成岩を発見した.得られたサンプルから飯豊地域の変成条件を検討したところ,300MPa程度・500℃〜670℃程度の変成作用を被っている事が明らかになった.この地域では最高温度条件は花崗岩の接触変成作用により獲得したらしいが,ザクロ石などの累帯構造などから,かつてはより高圧条件にあった可能性もあり,今後の課題である. また,澄川地域・泡滝地域の変成岩について同位体岩石学的な検討をさらに詳細に進めた.その結果,これらの岩石は足尾帯の砂泥質岩とは全く異なる同位体比を示し,この地域の白亜紀花崗岩類と殆ど同じである事がほぼ確実となった.現在,ここまでの到達点について論文の執筆を始める所である.また,今年度の予算で白金ルツボを購入した.これは,FeOの滴定分析や,ICP-MSのための試料調整でアルカリ融解法を行うのに用いる. 次年度は,飯豊地域の変成岩についてさらに補充調査を行うとともに,同位体岩石学的検討も行う.この結果が明らかになれば,羽越地域において,どのくらいの深さまで足尾帯の岩石があり,どのくらいよりも深部が別の地質体なのかが明らかになると期待される.
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