研究概要 |
今年度は,造山帯レルゾライト岩体およびオフィオライトのマントルカンラン岩に記録された岩石学的情報から,上部マントルにおけるアセノスフェアの上昇によるリソスフェアマントルの改変プロセスを解読することを目的に以下の研究を実施した. 1.7月〜9月に上越帯の至仏山超苦鉄質岩体の地質調査を行った.野外における岩相分布を調査し,分析に必要な岩石試料を採取した.野外調査に引き続き,室内における岩石薄片の鏡下観察とEPMAによる鉱物化学組成分析の結果,至仏山超苦鉄質岩体は初生的にレルゾライトを含むマントルカンラン岩から構成され,最高温度が700℃に達する熱変成作用を被っていることが判明した.岩体の変成分帯と熱変成作用の熱源の特定が今後の課題である. 2.オマーンオフィオライトのマントルセクションから昨年度に採取したカンラン岩の鉱物化学組成をEPMAを用いて測定し,広域的な空間分布を検討した.その結果,従来知られていなかった組成不均質性の存在が明らかになった.この結果,海洋リソスフェアの再溶融とアセノスフェア起源のメルトによる再肥沃化がkm規模で生じている可能性が得られた. 3.新実験室と分析機器の整備された11月以降,四重極型誘導結合プラズマ質量分析計によるカンラン岩の微量元素の測定を実施した.カンラン岩に含まれるpptレベルの超微量元素を高精度で分析する手法の開発を行った.また,試薬の蒸留装置を作成し,ブランクの低減に成功した. 4.昨年度から継続中の幌満カンラン岩に関する研究成果の口頭発表を,9月に倉敷で開催された第13回ゴールドシュミット国際会議と静岡で開催された地質学会第110年学術大会で行った.また,これらの成果を国際学術誌に投稿した.
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