研究概要 |
1.方法論的研究 (1)小断層群が複数の古応力を記録している場合に,それらの応力を分離することを目的として筆者が多重逆解法という手法を開発したが,その計算機ソフトウェアを,筆者のホームページを通じて世界に向けて公開した(http://www.kueps.kyoto-u.ac.jp/~yamaji/PDS/indexe.html). (2)昨年度開発した小断層データの傾動補正法に多重逆解法を組合せ,褶曲帯のように地層が大きく傾いた地域でも小断層解析を適用できる方法を提唱した(Yamaji et al.,2005,Journal of Structural Geology). (3)多重逆解法を含む,断層データのいわゆる応力テンソルインバージョンが,5次元単位球面上のクラスター解析に帰着することを発見した.また,高次元の単位球面上に計算メッシュを構成し,応力を検出する際の分解能と効率とを改善した.これらについては,論文を国際誌(Journal of Structural Geology)に投稿中である. (4)上記のクラスターの集中度を定量化する方法の探求から,楕円体群の主方向と軸比の平均・分散を見積もる方法をみつけた.それを堆積物粒子のファブリックに応用した研究を公表した(Yamaji & Masuda,2005,Journal of Sedimentary Research).また,テクトニックな変形について平均と分散を求める方法を考案した. 2.日本列島の応力場変遷に関する研究 (1)新潟地域において多数の小断層データを収集した.そして上記の傾動補正ソフトウェアを活用し,褶曲帯における古応力復元の可能性に関する研究を行った. (2)四万十付加帯の小断層から古応力が検出できるか,検討を加えた. (3)グリーンタフ地域の前期中新世の地層に本方法を適用し,日本海拡大期の応力場を検討した(小林ほか,2005).また,東北地方の第三系・第四系への適用可能性を検討した.
|