研究概要 |
中生代末期の地層から産出する恐竜卵殻化石について、その形態的特徴や産状の特徴に基づいて、比較検討を行いさらにいくつかのレベルにおける内部組織の観察を行った。中生代末期の白亜紀末期の地層から産出する卵殻化石にはいろいろな形態が認められ、それぞれの形態に基づいて分類がなされているが,それらの形態的特徴と内部組織との関連について、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡などを用いて、内部の組織学的な特徴を詳細に観察した。その結果,化石の形態的な特徴の違いがいくつかの段階における内部構造においても現れていることが明らかとなった。 卵殻の構造は基本的に方解石(カルサイト)の結晶集合体が組み合わさってできているマミラと呼ばれる単位から構成され,それらが配列して卵殻層を形成しているが,その配列の仕方や大きさなどは、形態的な特徴に応じて異なっている。また、中には卵殻内に空洞状の部分がある種類も見られる。このようにいろいろな多様性が認められた。これらを比較することにより,形態の異なる卵殻化石の相互の関係も類推された。 鉱物組成の検討の結果、恐竜卵殻化石は方解石(カルサイト)から形成されており、化石の場合,部分的には「再結晶作用」により、二次的な粗粒のカルサイトが生成されていることもあるが,保存のよいものでは初生的な鉱物組成とそれから成る卵殻の初生的組織が残されていることが多い。 また、最近多くの恐竜等の化石が発見されている石川県の手取層群について化石の調査を進め、石川県白峰村から新たに卵殻化石を見いだした。これらについても検討を行った。さらに、比較研究のため卵殻に限らず化石の歯についても微細構造の検討を進め、同じく白峰村の手取層群から発見された白亜紀の哺乳類型爬虫類であるトリチロドンについて、その臼歯と切歯のエナメル質の微細構造を観察し、従来ほとんど知られていなかったこのグループのエナメル質の内部組織に関する新知見を得ることが出来た。
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