中生代に大繁栄し、世界中に生息していた多くの種類の恐竜は、白亜紀末期にはすべてがこの地球上から姿を消して、代わって哺乳類が繁栄したことは従来の多数の古生物学的研究によって知られている。恐竜絶滅の原因は地球科学全般に関わるきわめて大きな問題であり、様々な観点から研究が進められてきた。本研究では、K-T境界で知られてきた地層中のイリジウムの高濃度の組成とそれとの関連で考えられている巨大隕石の衝突事件が、中生代末期の大絶滅の中での恐竜の絶滅と、どのように関わっているのかを明らかにするための具体的なデータを、化石そのものから抽出することを目的として、世界各地で発見される恐竜の卵殻化石の内部組織とその組成を詳しく調べた。今までの研究で指摘されてきた卵殻化石の殻構造に、白亜紀末期のものでは異常な形態がみられるが、それをさらに光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて検討した。 (1)内部組織を調べた化石卵殻はマミラと呼ばれる卵殻を構成する基本単位からできている。それらの形態、大きさ、配列様式などは形態の違いにより、それぞれ異なっている。 (2)走査型電子顕微鏡による観察では、光顕段階よりも遙かに微細な卵殻の組織が観察され、形態差に対応する内部構造の差異が認められる。 (3)卵殻の鉱物組成はおもにカルサイト(方解石)であるが、今回観察した試料でもカルサイト質であり、微細な組織も保存されていることから、続成作用による変質は少ないと思われる。
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