研究概要 |
西南日本における大規模な白亜紀・古第三紀珪長質火成活動の要因はKula-Pacific ridgeのユーラシア大陸東縁部への沈み込みによるものと考えられている。その際,当時日本が位置していた地域下には大陸性リソスフェアの存在は限られ,海洋性リソスフェアが広く存在していたものと考えられてきた。しかし,領家帯や山陽帯で白亜紀に活動した塩基性・中性岩類のSrやNd同位体組成を含む地球化学的性質はそれらが大陸性のリソスフェリックマントルから由来したことを示している。また同地域の酸性岩類はそれらよりややenrichした性質を示し,やはり大陸性下部地殻物質が存在していたことを示している。一方,山陰帯では白亜紀末から古第三紀の火成岩類が分布しており,そのうち塩基性・中性岩類の地球化学的性質は,それらが海洋性リソスフェリックマントルから,また酸性岩類はdepleteした下部地殻から由来した,との見解と矛盾しない。 これらの結果から,白亜紀においては,当時の韓半島および日本地域下には大陸性のリソスフェアが広く存在していたものと判断される。しかしその後,.白亜紀末から古第三紀にかけて,背弧側でdepleteしたマントルプリュームの活動が開始され,それによって現日本海を挟む西南日本山陰帯および韓半島東縁部の慶尚盆下のマントルおよび地殻が地球化学的に大きく改変され,時代を追ってdepleteした性格に変化したものと考えられる。このマントルプリュームの活動は新第三紀の日本海の形成につながったものと判断される。新第三紀以降の日本海を挟む地域下のリソスフェアはさらにdepleteしたものに変化している。現在このようなモデルについてのより詳細な検証を進めているところである。
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