研究概要 |
西南日本の白亜紀-古第三紀珪長質火成岩類には,それらの地球化学的性質に時空変化が認められる.年代的には,領家帯や山陽帯の南半部には100Maを超える古期の花崗岩類も分布するが,多くは80-90Maの年代を示す.これらの年代に相当する白亜紀の珪長質火成活動は山陰地域にまで及んだことが明らかにされた.この期の活動は韓半島においても活発であることから100-80Maの火成活動は幅数100kmに及ぶものであった.その後この火成活動は75Ma以降,幅が収縮し山陰地域と韓半島南東部のみに収束し,古第三紀中期以降の活動はさらに幅がせばまった.この結果は100-80Ma時に海嶺の沈み込みがあり,結果として幅広い活動が生じたものと考えられる.その後沈み込むスラブの温度低下によって,古第三紀以降の活動は通常の沈み込み帯と同様な幅の活動になったものと考えられる. 領家・山陽南部の火成岩類は塩基性・酸性を問わず,Sr同位体初生値が高く,Nd同位体初生値が低い.一方山陰帯の白亜紀火成岩類はいずれもSr同位体初生値が低く,Nd同位体初生値が高い.この差異は,地球化学的に類似したマグマが上部地殻物質との混合の程度の差によって説明するのは困難であり,それぞれのマグマソース自身に地球化学的相違があったものと考えられる.当時の領家帯や山陽帯南部の深部地殻やマントルはenrichした性格を持っており,古領家帯等の小大陸片が存在した可能性が高い.一方山陰の深部は,depleteした地殻下部およびマントルから構成されていた.山陰では,45Ma以降,花崗岩類はさらにdepleteした性格を示すことから,45Ma以降山陰下のマントルにdepleted asthenosphereが注入し,その影響で下部地殻がさらにdepleteした性格になったものと判断される.
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