研究概要 |
今年度は試料採集と現世トゥファの分析に重点を置き,岡山県新見市・沖縄県宮古島など国内数カ所に加えて,中国四川省・雲南省などで現世トゥファ・古トゥファ試料の採集と水質の分析を行なった.特に,岡山県新見市では縞状組織の保存状態の現世堆積物試料および古トゥファ堆積物を採集することが出来た. 採集した堆種物は各々半分に切断し,1つを樹脂で固め,試料の研磨薄片を作成した.薄片の作成に際して,設備備品として購入した薄片作成機(ヒリキスト社製)が大いに役立ち,出来の良い薄片を短時間で制作する環境を整えることが出来た.研磨薄片は組織の観察と写真撮影を行った後で,X線マイクロプローブを用いて,CaやSiなどの元素含有量の線分析に用いた.さらに,残りの半分の試料は縞伏組織に平行な面で0.2mmごとに削り,安定同位体比や微量元素の分析を行っている段階である.これらのデータは次第に揃いつつあり,その処理のために購入したパソコンは研究効率を大いに高めている.予察的には,トゥファ中のSiやAl含有量が降水イベント直後の増水時に地下から懸濁した粘土鉱物の沈着を反映していることが解り,これら元素のX線強度と気象観測所の降水量記録の対応関係を検討中である.今後,過去の降水イベントを高精度で読みとることが可能であり,古気候研究分野でのインパクトのある研究成果を提示することが期待できる. また,鹿児島県徳之島のトゥファに関する記載論文を地質学雑誌に,トゥファ中の年縞の発達過程についてまとめた論文を国際誌に掲載した.
|