研究概要 |
大陸地殻の形成と発達という問題は,近年多くの地球科学者の注目する所であり、特に始生代の大陸地塊(クラトン)への関心が高いが,基礎的な記載岩石学研究があまり行われていなかった.ダルワールクラトンは,ゴンドワナ超大陸の中核部分をなしており,本研究においては主構成岩石であるペニンスラー片麻岩(TTG)とクロスペット花崗岩について,(1)岩石組織と変形構造を検討し,(2)主要造岩鉱物の微細組織と化学組成を調べ,(3)幾つかの鉱物のペアより平衡温度を求め,(4)これらの広域的変化と同位体年代より,同クラトンの変成温度構造と熱史(変成履歴)の解明を目指した.その結果以下の成果を得た. 1.これまで系統的データのなかった始生代花崗岩類のモード組成を与え,カリ長石に乏しい花崗岩類と信じられてきた中に,相当量のカリ長石を含む花崗岩類が多いことがわかった. 2.これまで一般に古い地質時代のカリ長石は低温型微斜長石であると信じられてきたが,そうではなく,変成温度構造に応じて低温型微斜長石から高温型の正長石が残存しており,インド大陸南端部のケララ地域には高温・急冷を示唆する長石があることがわかった. 3.全岩分析値・微量成分などの地球化学的検討を行い,TTGと考えられてきた岩石は,多様な起源をもち,一部は30億年以前の古い基盤をなすが,相当量は始生代末(2.52Ga)のクロスペット花崗岩に同期のものである可能性が大きいことがわかった.両者は始生代末の全域的な高度変成作用を受けるために,従来区別が難しかったのである. 現地における共同研究者のJayananda博士(Bangalore大学)は2度来日し,XRF, EPMA分析等を行った.この際,研究代表者の加納と,上記結果に基づきTTGの再検討を行うための重要地域を選んで,今後も共同研究を発展させるべく討議を行っている.
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