研究課題
本研究は、西南日本外帯、特に黒瀬川帯に断片的に分布するオフィオライト様岩石とオーストラリアのニューイングランド摺曲帯に伴われる蛇紋岩帯との地質構造的類似性および関連性を明らかにすることを目的に開始された。本年度は、研究の第1年次に相当するため、黒瀬川帯およびニューイングランド摺曲帯の蛇紋岩類及びそれに含まれるテクトニックブロックの調査を中心に研究が進められた。調査地域における黒瀬川帯の蛇紋岩メランジュ中には、新たにグラニュライトあるいはエクロジャイト相に相当するような高変成度の変成岩ブロックが見つかった。この変成岩ブロックの岩石学的・鉱物学的特徴について現在検討を進めている。一方、ニューイングランド摺曲帯の蛇紋岩メランジュ中のブロックについては、その年代学・岩石学・地球化学的特徴が衣第に明らかになってきた。蛇紋岩メランジュの中には、前期カンブリア紀の島弧下部的性質を有する岩石や、海嶺性玄武岩が前期オルドビス紀の沈み込みによる高圧変成作用を被った岩石、さらに前期シルル記の島弧性閃緑岩など、多様な岩石がテクトニックブロックとして混在していることが明らかになった。その成果について、昨年開催されたInternational Symposium on the Amalgamation of Precambrian Blocks and the Role of the Paleozoic Orogens in Asiaで発表を行い、現在論文化作業が進行中である。黒瀬川帯の構成要素には、古生代ゴンドワナ大陸に起源を持つと考えられる岩石が含まれ、その帰属に関して現在も活発な議論が展開されている。オーストラリア東部のニューイングランド摺曲帯との関連性も含め、両構造帯に含まれるオフィオライト岩類および蛇紋岩類を岩石化学的に対比させて古生代のゴンドワナ大陸東縁部の構造発達史を考えていく。
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