研究概要 |
本研究は,西南日本外帯,特に黒瀬川帯に断片的に分布するオフィオライト様岩石とオーストラリアのニューイングランド褶曲帯に伴われる蛇紋岩帯との地質構造的類似性および関連性を明らかにすることを目的に開始された。本年度は,研究の第2年次に相当するため,黒瀬川帯およびニューイングランド褶曲帯の蛇紋岩類及びそれに含まれるテクトニックブロックの調査を中心に研究が進められた。特に,ニューイングランド褶曲帯の蛇紋岩に伴われるテクトニックブロックについては,2003年9月に集中的に野外調査を行った。これまでの研究成果によって,蛇紋岩メランジュ中には,前期カンブリア紀の島弧下部的性質を有する岩石が存在することを明らかにしているが,今回の調査により,異なったタイプのマグマがお互いに貫入しあっている様子が観察された。現在,野外調査により得られた岩石試料について,顕微鏡観察を行い,その全岩主化学組成,微量元素組成,さらにSr・Nd同位体組成を分析している。 これまでの研究成果は,「Geochemistry and chronology of tectonic blocks in serpentinite melange of the southern New England Fold Belt, NSW, Australia」として,Gondwana Research誌に掲載される。 黒瀬川帯の構成要素には,古生代ゴンドワナ大陸に起源を持つと考えられる岩石が含まれ,その帰属に関して現在も活発な議論が展開されている。オーストラリア東部のニューイングランド褶曲帯との関連性も含め,両構造帯に含まれるオフィオライト岩類および蛇紋岩類を岩石化学的に対比させて古生代のゴンドワナ大陸東縁部の構造発達史を考えていく。
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