研究概要 |
研究計画調書の記載に沿い,本年度は,1)設備備品費で購入した導電率計測機の立上げと検量線の作成,2)野外調査で必要な基図の調達と複製(東京出張:5月21日),3)野外調査および試料収集(北海道出張:7月31日〜8月12日,熊本出張:1月26日),4)収集試料の前処理と室内実験を実施した。 1)については,試料ホルダーの改造によって研究遂行に十分な精度のデータが野外で効率よく得られることが確認できた。2)および3)では,北海道と九州における白亜紀・第三紀堆積岩の堆積相観察と試料収集,北海道における現世有機質堆積物の堆積相観察と試料収集,および堆積物間隙水をはじめとする水の酸化還元電位の現場測定を行うことができた。4)については,堆積岩石学的な検討(粒度分析,砕屑物および自生鉱物の鉱物同定,炭素・窒素含有量の測定,炭素質物質の同定),間隙水の検討(水の化学分析,自生鉱物に含まれる流体包有物の塩濃度測定)の一部を実施した。多量の試料を迅速に処理するため,地質試料の扱いに慣れた地球圏科学科の大学院・学部学生の助力を得たが,このための謝金を支出した。 野外調査および室内実験の結果,有機質堆積岩・炭酸塩岩の分布地域における水(堆積間隙水,流下水,天水)の酸化還元電位,水の酸化還元電位と堆積岩中の自生鉱物種との関係,自生鉱物種と炭素含有量との相関を把握することができた。成果の一部は,日本地質学会(新潟大学),日本サンゴ礁学会(東京工業大学),日本地質学会西日本支部例会(福岡大学)で発表したほか,投稿論文を準備中である。また,本年度の調査によって精査の必要な部分が判明したので,これに基づき次年度の研究を遂行する。
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