研究概要 |
泥炭地(北海道サロベツ,長崎県森山),河川氾濫原(北海道天塩),デルタ域(福岡県福岡市),サンゴ礁(沖縄県石垣),石灰岩洞窟(福岡県北九州市),マンガン酸化物が堆積しつつある湧泉(北海道足寄)で,野外調査と堆積物間隙水の酸化還元電位・pH・電導度測定を行った。各調査地で採取した堆積物試料は,透過および反射顕微鏡観察,有機岩石組織分析,元素分析(CNコーダー,CHN分析装置),X線回折に供した。 検討の結果,全炭素含有率は泥炭地試料で〜86wt.%(90wt.%,daf),氾濫原およびデルタ域試料で〜10wt.%,サンゴ礁試料で〜10wt.%,石灰岩洞窟試料で〜45wt.%,マンガン湧泉試料では0.0wt.%(ND)であった。酸化還元電位は,泥炭地で10〜21mV,氾濫原およびデルタ域で120〜210mV,サンゴ礁で97〜118mV,石灰岩洞窟で290〜334mV,マンガン湧泉では150〜314mVであった。セメント前駆物質として,泥炭地堆積物から粘土鉱物(スメクタイト,カオリナイト,アロフェン?),氾濫原およびデルタ域堆積物からシリカ鉱物と粘土鉱物,サンゴ礁堆積物から粘土鉱物と炭酸塩鉱物,洞窟堆積物から炭酸塩鉱物と鉄酸化・水酸化鉱物,マンガン湧泉から二酸化マンガン鉱物が見出された。 石灰岩洞窟を除く各堆積場では,水の酸化還元電位と堆積物の炭素含有量との間に負の相関が認められた。洞窟堆積物では炭素の大部分が炭酸塩・炭酸イオン・炭酸水素イオンとして存在するために他試料とは異なる挙動を示す可能性が強く,今後の検討が必要である。堆積環境および続成変化の解析のための手段として,間隙水の酸化還元電位は有用であることが明らかになった。
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