研究概要 |
更新統下総層群清川層の河川の氾濫原堆積物の解析をおこなった.常総台地に広く分布する更新統下総層群清川層は,陸成〜浅海成層からなり,下部に指標テフラKy2,3(TB-7,8)を挟み,MIS7.4〜7.2の間の1回の海水準変動に対応した堆積シーケンスを形成している.近年,多数の陸棲脊椎動物化石や淡水生貝化石,植物化石などを含む"化石密集層"が袖ヶ浦市吉野田の清川層の河川氾濫原相から発見され,その層相と化石群組成から洪水堆積物であることが明らかにされている.また,調査地点周辺の清川層の河成層は,河川システム(ポイントバー相+氾濫原相)が二段に重なる.このような特徴を下総層群の他の累層の河成層と比較すると,亜氷期に河川によって浸食された谷が,亜氷期から亜間氷期にかけて後背地からの十分な砂礫の供給によって埋積されるという形成過程が推測される.このような河川環境が清川層での頻繁な河道変化や洪水による氾濫をおこした可能性が高い 米国リオグランデ川氾濫原堆積物と含む三角州表層堆積物の解析をおこなった.表層堆積物は,地形的および水利に異なる10の環境から164のサンプルが得られている.すなわち,リオグランデ川,三角州平野,旧河道,湿地,小川,塩水湿地,泥質砂丘,ラグーン,海岸砂丘,海浜である.これらの各環境から得られたサンプルから,粒度分布,物組成および生物起源粒子が計測された.これらのデータを解析すると,粒度分布(平均粒径,分級度)から2つのループが識別された.一つは粒径値が増加するにつれて分級度が悪くなる傾向をもつグループ(Aグループ)で,も一つは粒径値は大きいが分級のよいグループ(Bグループ)である.AグループにはI〜VIIの環境が,BグループにIXとXが含まれる.これらのグループの鉱物組成をみるとAグループには重鉱物や岩片などを比較的多く含み,Bグープは軽鉱物のみでその他のものをほとんど含まないことがわかる.また,Aグループは平均粒径が大きくなるほど,片が多くなるのが特徴である.これらのことからAグループは,河川から供給された砕屑物が主なソースとなって河から氾濫原に広く供給されたものと考えられる.Bグループは主に沿岸流などで再堆積したものであることが考えらる.したがって,各環境はその堆積作用をよく反映した堆積物から構成されていることがわかる.
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