研究概要 |
本年度の研究は、化学合成生物群集をエネルギー的に支える微生物をバイオマーカーによって決定することを試みた。用いた試料は現世の海洋底から採取した独立栄養細菌であり、これについてバイオマーカー分析を行った。具体的には、「ドルフィン3K」第506潜行および「しんかい2000」第1363潜行において、黒島海丘の6地点から採取した泥質堆積物およびメタン湧出に関係して生息しているバクテリアマットについて有機地球化学分析を行い、メタン菌、メタン酸化菌および硫酸還元菌についてバイオマーカーを用いた特徴付けを試みた。本研究では、通常のバイオマーカー分析に引き続いて、抽出物の極性画分についてHl/LiAlH_4処理を行いエーテル結合性炭化水素について分析を行った。抽出性炭化水素画分については、ドルフィン3Kにて採取した試料から以下のバクテリア起源と考えられる特徴的なバイオマーカーが検出された。すなわち、(1)偶数優位性を持つn-alkane、(2)奇数炭素数の3,7-dimethylalkane、(3)偶数炭素数のalkylcyclopentane、(4)個別炭素同位体組成はphytaneを除いて-25‰から-27‰の狭い範囲に入る。これに対して、極性成分のHl/LiAlH-4処理後のエーテル結合性炭化水素画分は、軽い炭素同位体組成を持つphytaneで特徴付けられる。このphytaneはphytyl diethersに由来し、メタン細菌の存在を示唆している。以上のバイオマーカー分析の結果をバクテリア種のデータを結びつけて、バイオマーカーを用いたバクテリア種の特定を試みた。
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