研究概要 |
1.南中国揚子地塊南縁部に分布するペルム/トリアス系境界層ならびに最下部トリアス系(Hindeodus parvus帯)の堆積相・岩相・微生物相の検討を行なった.その結果,次のことが明らかとなった. (1)ペルム/トリアス系境界は,詳細な岩相ならびに微生物相の証拠から不整合関係で特徴づけられる. (2)最下部トリアス系はスロンボライトで特徴づけられる.スロンボライトは,微視的〜巨視的観点からそれぞれ特異な性質を有する.地域を問わず共通して,「中視的な組織」と「巨視的な構造」の多様性が認められる. (3)スロンボライトの形成開始ならびに形成休止様式にも共通性が認められる. これら1)ペルム/トリアス系接触様式,2)スロンボライトの組織や構造の多様性,3)スロンボライトの存在様式と,ペルム紀末の「礁生態系の崩壊」後の「海洋環境変動」との関連性が注目される. 2.オーストラリアN.S.W.州に分布する下部デボン系微生物礁の形成を,代表的な造礁後生動物である層孔虫が内外に創りだす微環境の「微生物岩による充填様式」という観点から解明した.絶えず更新される微空間は,「多様な微生物群集」や「微生物群の多様な成長様式」によって活用されている. 3.古生代を代表する後生動物群である四射サンゴの成長可塑性の一端を,「無性生殖様式の規則性」と「成長様式の変異性」の観点から考察した. 古生代中期から中生代最前期にかけての「礁生態系の実態」の解明には,時代ごとの後生動物と微生物の間の「相互作用」ならびに「相互作用の時代変遷」を十分に考慮する必要がある. 上記の研究の一部は,学術雑誌,ならびに日本地質学会・日本古生物学会などの場で発表された.
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