研究概要 |
本研究の全体計画は,(1)現生のアマミノクロウサギの歯列および頭骨・骨格の詳しい記載,(2)中国で発見された時代の異なる大量のPliopentalagusの化石を中心に(1)のデータを加えて,ウサギ亜科におけるPliopentalagus-アマミノクロウサギ系列の形態的,時間的進化を解析し,(3)現在進行しつつある分子生物学的な研究成果とつきあわせて互いの分野の成果を検証し,さらに(4)これまで系統上の関係が疑問視されていた北アメリカ産のAztranolagusとPliopentalagusの系統上の関係を明らかにすることを目的とする.このうち本年度の目的は(2)の一部と(4)の北アメリカ産化石のデータ収集および記載が中心であった. (4)の北アメリカ産化石の研究は,7月にテキサス州へ2週間出張して行った.テキサス大学エルパソ校とオースチン本校に保管されている約200点すべての標本を調査し,当初の仮説を裏付けるすばらしく良好なデータを得た.(2)の一部とした部分については,海外共同研究者の金氏にひきつづき化石のクリーニング等の準備をしてもらい,3月に冨田が北京へ出張しデータの詰めと研究の打ち合わせを行った. 研究成果の公表については,北アメリカのAztlanolagus属の調査研究の成果を中心に,「Aztlanolagus属は中国のPliopentalagusから進化したもので,およそ500万年前にアジアから北アメリカに侵入したと解釈される」との内容の発表を,2月に葉山で開かれた国際シンポジウムで行った(裏ページ参照).また,現在それを論文に取りまとめつつある.
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