研究分担者 |
加藤 工 九州大学, 大学院・理学研究院・地球惑星科学部門, 教授 (90214379)
中野 孝教 人間文化研究機構, 総合地球環境学研究所・研究部, 教授 (20155782)
小松原 哲郎 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 講師 (10195852)
笹 公和 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 講師 (20312796)
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研究概要 |
本研究は、地球内部流体による元素運搬を解明するため、高エネルギーイオン線(PIXE法)による流体包有物の組成分析法を開発することを目的としている。本年度は当初の計画通り、甲府花崗岩体北縁部の長野県川上村川端下の熱水石英脈中の流体包有物の定量分析を実施した。この熱水脈の近傍には熱水性の銅-鉄鉱床が存在することから、熱水流体による遷移金属の運搬を検討する上で適切な試料である。 定量の結果、流体包有物中には0.2-9wt%のCaとFe,300-8000ppmのMnとZn、40-3000ppmのCu、100-4000ppmのBr, Rb, Sr, Pb,そして100ppm以下のGeが含まれていた。これらの元素種と濃度範囲は、オーストラリアのMole花崗岩の熱水脈やユタ州Binghamの斑岩銅鉱床中の流体包有物などから報告された値とほぼ一致している。これは、花崗岩形成に伴い放出される流体には、基本的に上述の元素種が上述の濃度で含まれていることを示唆している。今回の流体包有物中のMn, Fe, Cu濃度は、石英脈の付近に湧出する高食塩泉の増富温泉の温泉水に含まれる濃度より約1000倍高く、包有物を形成した熱水流体は、銅・鉄鉱床を形成するのに十分な遷移金属を含んでいたと考えられる。この高濃度のMn, Fe, Cuは、付近の同じ熱水起源とされる銅・鉄鉱山の存在と調和的である。また、巨大流体包有物の測定で観察されたBa, La, Ceも熱水脈の流体包有物ではしばしば検出されている。川端下では未確認であるが、甲府花崗岩体付近の石英脈はモナザイトを含むことが知られており、花崗岩起源流体には軽希土類元素も濃集することを示している。
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