研究概要 |
Ishiwatari & Tsujimori(2003)は上越帯を含む日本列島とロシア沿海州のオフィオライト岩類と高圧変成岩類の時空分布と岩石学的性質をまとめ,日本海拡大以前の両地域の連続性を確認し,更に中朝・揚子両地塊の大陸衝突帯が朝鮮半島を迂回し八重山諸島の高圧変成帯を経て日本列島に続くとする八重山説を展開した.Ishiwatari, Sokolov & Vysotskiy(2003)は日本〜ロシア極東の延長6,000kmにわたりオフィオライトの産状,時代,岩石学的性質をまとめ,この地域のオフィオライトが高枯渇度かんらん岩に富むことを明らかにし,マリアナ型沈み込み帯におけるオフィオライト形成と南海トラフ型沈み込み帯における付加体形成の繰り返しにより顕生代全期間にわたって多重オフィオライト帯が形成されたという説を提唱した.石渡(2003)は飛騨ナップ存在の疑問点を論じた.Ichiyama and Ishiwatari(2004)は京都府夜久野地域における夜久野オフィオライトを研究し,それが海台ではなく縁海の海洋地殻・マントルとして形成されたことを明らかにした.Ishiwatari and Ichiyama(2004)はロシア沿海州,中国東北,サハリン,日本列島のジュラ紀付加体中に産する超苦鉄質溶岩とアラスカ型貫入岩体が,沈み込み帯周辺における直径2,000km程度のジュラ紀スーパープルームの活動により形成されたこと,二畳紀後期にも同様の活動があったことを提唱した.Ichiyama and Ishiwatari(2005)は岐阜県根尾谷の美濃帯舟伏山石灰岩・緑色岩体に伴われるチャート中に,非常にHFSE(Ti, Nbなど)に富むピクライト岩床を見出し,それがシベリアLIPのものに類似したペルム紀スーパープルームに由来するHIMUマントル起源マグマであることを明らかにした.清水・石渡(投稿準備中)は上越帯の谷川岳露頭及び中新統粟沢層中の礫として産する古生代高圧変成岩の岩石学を研究し,典型的な藍閃変成帯とやや低圧の変成帯とが複合していた可能性を示した.本研究により,日本と東アジア地域の付加体や変成帯に産するオフィオライト,緑色岩及び高圧変成岩について以上のような成果が得られた.
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