研究概要 |
1 抵抗加熱FZ単結晶育成装置を改良した。要求した大電流交流安定化電源を設置し,SHG特性のあるLi_3VO_4の単結晶を育成することで装置の調整を行っている段階である。引き上げ方式にしたほうがより良い結晶が得られることが分かった。 2 モルホロジーについては,フラックスを酸やアルカリで溶かすことができないので,白金線上に結晶を成長させ,適切な温度で引き上げることで,結晶を取り出す方法をマスターした。その結果,{NaCa_2}Zn_2V_3O_<12>結晶において、過飽和度が大きい場合には{211}からなり,過飽和度が低い場合には{110}からなることが明らかになった。 3 構造解析については粉末試料を用いてリートベルト法で,{xX_2}{Y_2}(V_3)O_<12>,-x=Na, Ag, X=Ca, Sr, Pb, Y=Ni, Mg, Cu, Zn, Co, Mn-について行った。その結果Y=Cuのガーネットでは各原子の原子変位パラメーターが他の組成に比べ2倍以上であることが明らかになった。これはCu原子はヤーン・テラー効果のために・本来なら2種類以上の席をとるところであるが無秩序に分布し,等軸晶系になっているためである。また、12面体の歪の度合いとYの大きさについて興味深い結果が得られた。一つ目は,{xX_2}が同一の場合,Yイオンが大きくなるにつれて12面体の歪は小さくなるが,Cuイオンの場合は例外でかなり小さくなった。二つ目は,Yが同一の場合Xに関してはイオン半径の大きさの順に歪の大きさはCa<Sr<Pbの順で大きくなったが,xに関してはAgとNaではイオン半径の大きさとは逆にひずみの度合いはAg<Naの順で大きくなった。これは酸塩基に見られるHSAB原理に関係していると考えられる。つまり酸素が硬い塩基でNa^+が硬い酸であるのに対して,Ag^+が軟らかい酸であるために起こったと考えられる。
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