研究概要 |
本研究の目的は,混合ガスハイドレート(ガスハイドレート固溶体)の諸性質を分子動力学(MD)計算で再現&予言(予測)するとともに,諸性質のあらわれるメカニズムをミクロな原子レベルで考察することにある.本年度は,メタン+二酸化炭素混合ハイドレート(構造I型,Pm3n)について3種類の系列の固溶体,1.SケージにCH4分子が,MケージにCO2分子が完全に濃集して分布した固溶体 2.SケージとMケージにCH4分子と,CO2分子が均等に入った固溶体 3.SケージにCO2分子が,MケージにCH4分子が完全に濃集して分布した固溶体 を作成し,格子定数およびモルエンタルピーの組成依存を調べた.経験的に決められた粒子間ポテンシャル(河村)を使用し,さまざまな組成(ガス分子の存在比)の結晶について,温度圧力一定条件下でMD計算を行うことによりマクロ量を求めた.現時点までに得られた特徴的な結果は以下の通りである. 1.格子定数の組成依存 MケージおよびSケージにおけるCO2存在率[=CO2/(CH4+CO2)]に応じて,格子定数は系統的に変化していく.二酸化炭素ハイドレートの格子定数はメタンハイドレートのものに比べて,100Kで0.1%,300Kで0.3%大きい(圧力0.01GPaのとき).格子定数値は,Mケージ中のCO2存在率よりもSケージ中のCO2存在率に敏感である. 2.モルエンタルピーの組成依存 上記3種類の固溶体の中では,CO2ガスがMケージに優先的に入る系列の構造が最も安定である.このことは,ラマン分光分析でCH4とCO2のケージ占有性を求めた結果(Nakano and Ohgaki, 2000)と調和的である.
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