研究概要 |
当該研究の出発点となる疑問は,何故高温変成岩に多くの反応組織が残っているか,という点である。これを解く作業仮説として,粗粒であるために拡散経路となる粒界が少ないことを考えた。この仮説の妥当性を確かめるために,高温での結晶の成長を何が律速するかを検討した(研究発表1)。この研究では、雪玉状の鉱物の成因を組成累帯構造,結晶方位,三次元形態の情報から検討し,周囲の拡散に律速された選択的成長が重要であることを明らかにした。一方,温度の上昇は鉱物の成長のみならず,鉱物組み合わせの変化も引き起こす。研究対象の1つである領家変成帯で,高温条件を示す指標鉱物が広く分布することを初めて記載し,領家変成帯が従来の認識よりも更に高温であることを明らかにした(研究発表2)。また,そのような高温を引き起こす熱源についての従来の熱拡散モデルに対し,初期条件と,解くべき制約条件についての問題点を考察した(研究発表3)。今年度後半から調査する南極地域の高温変成岩について,既存の試料を用いて予察的な観察を行い,領家変成岩との比較を行ない,温度が300℃以上異なるにも関わらず,より高温の岩石にも反応組織が広く見られるという従来の記述を確認した。
|