研究概要 |
岩石中で鉱物が成長するためには,鉱物を構成する元素の濃集が必要である.昨年度,周囲の元素拡散が重要な働きをするという論文を発表したところ,直ちに学会で反応があり討論論文を発表した(研究発表1). 元素拡散の容易さは,温度圧力という物理条件に大きく影響される.従って,岩石の温度圧力を正確に決定することが重要な課題となる.熱力学条件を定式化した新しい手法を開拓し,従来条件を決定することのできない岩石の温度圧力条件を求めることができる原理を解説論文として公表した(研究発表3,4).その結果を含め今までの成果を学会の野外観察旅行で説明し,それに必要な案内書を作成した(研究発表5).一方で,元素拡散は周囲の岩石が固体であるか,一部融けているかで大きく異なる.同じ温度でも不適合元素であるボロンがあるかないかで岩石の状態は大きく異なる.そこで,岩石中のボロン含有量を測定すると同時に,ボロンを含み比較的高温まで安定な電気石の地理的分布を押さえ,岩石の部分融解によって,ボロンが系から放出されることを明らかにした.これは片岩から片麻岩への岩石組織の変化をもうまく説明できる(研究発表2). これらの成果を踏まえ,昨年度採集した南極の岩石についての分析と解析を進めた.低温から高温の広い温度範囲の岩石を調べ,その変形様式,応力場が基本的に温度に因らずに同じであることを明らかにした.そして,それらの成果を一部学会で発表した.
|