微小領域回折計では、X線回折写真(振動写真)の撮影時に対象とする試料がマイクロビームから外れないことが重要である。そこで本研究は、少なくとも1マイクロメートル程度の交差精度を持つ試料回転機構を開発することを主な目的としている。この交差精度を実現するために試料回転機構にXYステージを組み込み、回転角に対する回転中心からのずれを自動的に補正することを計画していた。 回転ステージの交差精度を補正するとはいえ、再現性などの点からもその補正量は少ない方が良い。交差精度には偏心の他に揺動による誤差が影響する。また、振動運動をさせることを想定しており、バックラッシュが少ないことも重要である。さらに、角度に対する補正量を算出するためにエンコーダーによる位置の検出も必要である。これらの点を考慮した上で、回転ステージの選定を行った。本研究の計画段階では、XYステージをこの回転ステージ上に取り付けて交差精度を補正する事を考えていたが、XYステージの揺動による誤差も問題となるため、この影響を少なくすることが必要になった。単純にステージの数が2倍になれば誤差も2倍になる。そこで、マイクロビームに対して垂直な成分のみを補正すれば、目的とする性能を最低限実現できることから、電動精密Xステージのみを組み込むこととした。このステージも、揺動やバックラッシュが少なく、エンコーダーを備えた物とした。これらを用いて試料回転装置の作成を行った。現在これを既在の微小領域回折計(マックサイエンス製)に取り付け、試料の回転角度に対する中心のずれを光学顕微鏡により測定し、自動的に補正を行うためのデータを収集している。最終的な評価は来年度予定されているSPring-8での実験で行う。
|