平成15年度は、前年度に引き続いて、X線吸収微細構造(XAFS)分光法を用いた分析を行うとともに、実験室において炭素質隕石を加熱し、加熱前後の炭素質物質の変化を観察した.XAFS分光法については、前年度に標準的な試料調製法・測定条件を確立したが、今年度、さらにSayama隕石などいくつかのサンプルの分析を行った.分析は、含硫黄炭素質物質に着目して行った.その結果、以下の点が明らかになった. ・熱変成度の小さいCMコンドライトには、2475eV付近の有機態硫黄の吸収が存在することを前年度観察したが、今年度新たに分析を行ったサンプルでも同じ結果を確認した.水質変質度の大きいCMコンドライトにもこの特徴は存在するが、Sayamaなど変質度の大きな隕石では、有機態硫黄の吸収強度も比較的大きい. ・変成度の小さいCMコンドライトでは、やはり硫酸塩の相対的に大きな吸収が存在することを、新たに分析したサンプルでも確認した. ・CVコンドライト(Allende限石)では、上記の有機態硫黄の吸収も硫酸塩の吸収も存在しないことを先に報告したが、COコンドライト(Ornans隕石)でもこの点は同様であった. さらに、サンプルにMurchison隕石を選び、実験室で加熱実験を行い、加熱前後でのXAFSスペクトルの変化を観察した.その結果以下のことがわかった. ・加熱後は、有機態硫黄の吸収も硫酸塩の吸収も消失する.これは昨年度、調べた熱変成度の大きなCMコンドライトの特徴と一致する. 以上の結果より隕石のXAFSスペクトルの特徴は隕石母天体での水質変質・熱変成の到達度を評価するのに有用であることを確課した.これらの結果の一部は国際隕石学会で報告した.さらにその後の成果を、Goldschmidt会議、南極隕石シンポジウム等で発表予定であり、さらに論文として投稿準備中である.
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