研究概要 |
重い原子では、相対論の効果とともに電子相関の効果を考慮することが重要である。しかしながら、電子相関を良く表現する基底関数はあまり提出されていない。本研究では、相対論の効果を考慮して電子相関用基底関数を開発した。 相対論の効果を3次のDouglas-Kroll近似を用いて考慮し、原子価電子の電子相関のための理想的な自然軌道を、藤永等のwell-tempered setを使って求めた。この理想的な自然軌道を再現するように、segmented contraction型の基底関数を決定した。この基底関数は全電子計算に対して決定されたが、モデルポテンシャル計算でも使用できるように配慮した。今年度は、ランタニド系列元素を除く、CsからRaまでの元素の基底関数を開発した。典型元素については、[1d],[2d1f],[3d2f1g]の3種類の基底関数を、遷移金属に対しては[1p1d1f]と[1s2p2d2f1g]の2組の基底関数を求めた。開発した関数のテスト計算を対象としたすべての原子で行った。どの原子でも理想的な自然軌道で得られる電子相関エネルギーの98%以上を与える良好な結果であった。さらに、モデルポテンシャル計算においても、全電子計算と同様の良好な結果を与えた。分子系への応用として、BiHとAuHについて開発された基底関数をMCPとともに用い分光定数の計算を行った。いずれの系でも、実験値と極めて良い一致を与え、分子系での有効性も示すことができた。 これらの結果は、分子構造討論会で口頭、およびポスターで発表され、J.Chem.Phys.の2報として公表された。引き続き、ランタニド系列元素の基底関数の開発を現在行っており、平行してweb公開にむけ基底関数データベース化の準備を行っている。
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