研究概要 |
(1)マイケルソン干渉計により分割したふたつのフェムト秒レーザーパルスの相対光学位相角を波長以下の精度で制御した光学装置を組みあげた。ダブルパルスを粉末もしくはTHF溶液中の連結アントラセンダイマーやデンドリマー分子等のエネルギー移動反応する超分子系に照射し、生成した励起状態波束の量子干渉を測定することに成功した。これはレーザー光子場によって励起ポテンシャル上での分子励起波束の制御が出来たということである。このような量子制御は気相分子や半導体井戸においては成功例があるものの、溶液や粉末状の凝縮系分子では世界的に始めての成功例である。 Sato, S., Nishimura, Y., Sakata, Y., Yamazaki, I., The Journal of Physical Chemistry Part A, 107, 10019-10025(2003). (2)凝縮系エネルギー移動反応は、分子内振動再分配や溶媒への振動エネルギー移動などの振動緩和と競合する過程である。振動エネルギー緩和は励起波束の量子位相を乱す過程であるため、本格的に凝縮系での量子エネルギー移動反応制御を目指す上で、振動エネルギー緩和の機構を解明し、更には抑制法を見出す研究は必要不可欠である。この目的のために、フェムト秒蛍光アップコンバージョン法による時間分解蛍光スペクトル測定とフランクコンドン解析を組み合わせた、振動緩和途上の振動準位のポピュレーション解析法を考案し、THF溶液中のペリレン分子、テトラセン分子等に適用した。この研究により、振動モード内熱平衡過程と振動モード間熱平衡過程の速度が異なることをはじめて実験的に見出した。 Kasajima, T., Akimoto, S., Sato, S., Yamazaki, I., Chemical Physics Letters, 375, 227-232 (2003).
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