研究概要 |
強レーザー場誘起の核ダイナミクスを再現できる時間依存密度汎関数法を開発するため,その精度比較に必要な現状では最も良く核運動を記述する時間依存断熱状態法を開発した.電子の動きはレーザー電場の変化に追従する時間依存断熱電子状態(レーザー場との相互作用も含めた瞬間的な電子ハミルトニアンの固有関数)とそれらの間の場で誘起された非断熱遷移の考えによって説明でき,対応した核ダイナミクスを追跡することができる.分子軌道法を用いれば,大きな分子の断熱電子状態も求めることができる.CO_2では,分子内電子移動によって正と負に帯電したO原子が生成し,負に帯電した不安定なO原子からイオン化すると考えられる.800nmの光と相互作用する場合は,CO^<2+>_2生成後,2つのC-O結合の距離が1.2から1.6Åあたりまで対称的に同時に伸び,それに伴い,非断熱遷移により,さらに高い断熱状態に移り,大振幅変角振動が誘起される.このような特異なダイナミクスはクーロン爆発するカチオンの構造変化の実験結果を説明する.また,800nmと400nmの2波長の光の間の位相を制御することによって,一方のC-O結合だけを選択的に解離させることができることを示した. このような現象を再現する電子と核を等価に扱う密度汎関数理論を構築するため,まず,H^+_2の時間依存シュレディンガー方程式の厳密解と比較することにより,核-電子相関ポテンシャルの座標依存性を明らかにした.これを参照しながら,相関ポテンシャルを核密度と電子密度についての明示的な汎関数として表すことを行っている.また,H_2の2電子波束の厳密計算や分子軌道法的アプローチによる4電子,6電子ダイナミクスを参照しながら,時間依存の電子-電子相関ポテンシャルの構築も行っている。
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