研究概要 |
本年度の研究では、励起三重項状態のXe原子6s[3/2]_1からのエネルギー移動により、熱平衡状態にある励起三重項状態の窒素分子N_2(B^3Πg, v=0)とN_2(W^3Δu, v=0)が選択的に生成することを見出した。6s[3/2]_1状態のXe原子は基底状態のXe原子を6p[1/2]_0状態へ249.6nmのレーザー光で二光子励起させた後、増幅自然放出を起こさせることにより生成させた。N_2(B, v=0)の濃度の時間依存を337.1nmにおけるレーザー誘起蛍光の観測から求め、その消光剤圧依存から総括速度定数を決定した。総括速度定数の測定結果はこれまで報告されているN_2(B^3Π_g, v≧1)に対するものよりも一桁小さい。このような極端な振動状態依存は、他の励起分子の消光過程では観測されておらず、振動緩和と電子緩和の競争だけで説明することは難しく、圧条件の違いに起因するものと考えられる。これまでの測定は低圧で行なわれ、N_2(B)とN_2(W)状態は平衡に達していなかったと考えられる。そのためN_2(B)から隣接する振動励起のN_2(W)状態への緩和の速度定数を測定していた可能性が高い。これに対して、今回は、熱平衡化した、N_2(B^3Πg,v=0)とN_2(W^3Δu, v=0)の化学的消光過程、及びそれら以外の電子状態への消光過程の速度定数を測定していると考えられる。水素分子との反応では、243.2nmでの二光子レーザー誘起蛍光法によるH原子の検出と収率の決定を試みた。その結果、H原子の生成効率は0.6以上と決定され、これが一つの主要な出口となっていることが判明した。一方、NOトレーサー発光を観測することで、最低励起三重項状態のN_2(A ^3Σu^+)の生成効率を求めたが、その効率は0.1以下と小さいものであった。
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