研究概要 |
第14族元素飽和分子では6員環がもっとも安定であることが知られている。それに対して、昨年度、(1)第15族元素から成る単環状分子(XH)n(X=N, P, As)では、5員環が最も安定であること;(2)5員環では、ひとつの原子上の孤立電子対の非結合性n軌道と両隣のビシナル位のX-X結合の反結合性σ*軌道の三つの軌道の間の位相が連続して環式相互作用(n,σ^*,σ^*)相互作用が促進され、孤立電子対がσ結合を介して環式に非局在化しやすいことが原因であることを明らかにした。 本年度は、シクロペンタンの炭素原子一つを、エネルギーの高いn軌道の孤立電子対を持つアルミニウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、リン原子に置換した分子の五角安定性を検証した。その結果、アルミニウムアニオン、カルベン、シリレン、ゲルミレンを含むものについては、ホテデスモティック反応熱によって評価される環ひずみエネルギーが、6員環より5員環の方が低く、五角安定性を持つ環状分子であることが明らかになった。 これらのことから、n軌道とσ^*軌道のエネルギー差が環式電子非局在化に影響を及ぼし、五角安定性を左右することが明らかになった。 また、反応の遷移状態構造においても、五角安定性を確認した。シクロペンタンのメチルアニオンによる脱プロトン化反応の活性化エネルギーは4.25kcal/molと、シクロヘキサンの反応4.52kcal/molより小さくなった。
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