研究概要 |
生体高分子会合の具体例として、モーター蛋白質であるアクチンについて,会合過程を考察すべく研究を行ってきた。まず、第一段階としてアクチン分子が2個会合した場合に働いている平均力について計算を行った。考察の対象を排除体積起因平均力(引力)に限定し、我々が開発してきた拡張scaled particle理論(XSPT)を用いて、2分子の相対配置を変更して結果を比較した。その結果、アクチンがフィラメントを形成した際の、螺旋に沿った2分子の相対配置が最も安定であることがわかった。また、キノコ毒であるファロイジン分子は、2分子の隙間に入り込むことにより、螺旋状の配置をより安定化させていることがわかった。これは、ファロイジン分子がアクチンフィラメントを固定化することにより毒として機能している知見と一致する。XSPTでは、分子内形状(蛋白質分子のコンフォメーション)を反映させた計算も可能である。そのため、モノマーとして遊離して存在するアクチン分子のコンフォメーションと、アクチンフィラメント中のアクチン分子のコンフォメーションで平均力の違いを考察した。その結果、アクチンフィラメント内でみられるアクチン分子のコンフォメーションは、螺旋状配置にあるアクチン2分子をより安定化することがわかった。これらのXSPTの計算には情報理論におけるアルファシェイプの方法が必要であり、この部分はEdelsbrunnerらのプログラムの利用にとどまっていた。この部分のプログラムを自作すべく、今年度はその基礎となる4次元凸包のプログラムの開発に取り組み成功した。
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