研究概要 |
核酸塩基の分極ポテンシャルの導出を目的として、以下に述べる理論的研究を行った。 1 核酸塩基の双極子モーメントと分子分極率の算出 アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)について量子化学計算を行い、双極子モーメントと分子分極率を求めた。計算レベルを変えて計算を行ったところ、MP2/6-31+G^*の双極子モーメントは、MP2/6-31++G(2d,2p)の計算結果をよく再現するとともに、実験値もよく再現することがわかった。分子分極率に関しては、MP2/6-31+G^*はMP2/6-31++G(2d,2p)を3%過小評価する結果となった。計算が比較的容易であるためMP2/6-31+G^*レベルの計算をベースとして分極ポテンシャルの開発を行うこととした。 2 核酸塩基の分極ポテンシャルパラメータの決定 分極ポテンシャルを構成するクーロン、分極、Lennard-Jones (LJ)の各項のパラメータの決定を行った。静電項のパラメータは、静電ポテンシャル最適化法で決定した値を用いた。分極項の多中心分極パラメータは、分極1電子最適化法で決定した値を用いた。LJ項のパラメータは、ペアポテンシャルで用いられる既存の値を使用したが、量子化学計算から得られる二分子間のポテンシャルエネルギー面を再現するよう修正を加えた。ATおよびGCの水素結合モデル及びスタッキングモデルでは、MP2/6-31+G^*レベルの計算でも基底関数スーパーポジションエラーが認められたためMP2/6-311++G(3df,2pd)またはMP2/6-311++G(2d,2p)の計算を行った。LJ項のパラメータの再調整を行い、相互作用エネルギーを再現する分極ポテンシャルの導出を行うことができた。また、核酸塩基にNa^+やCl^-イオンが近接するモデルについても検討したところ、非常に良好な結果が得られた。
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