研究概要 |
側鎖型サーモトロピック液晶ポリマー(R_1,R_2,R_3,R_4)は、主鎖部分にフェニル環を含む半剛直な骨格をしており、側鎖部分は低分子液晶が組み込まれている。側鎖の末端には結晶化を妨げて結晶の融点を下げて液晶状態を実現するフレキシブルなアルコキシ基-O(CH_2)_5CH_3が存在する。本研究では側鎖末端の異なる4種の側鎖型液晶ポリマーのR_1,R_2,R_3,R_4の液晶性発現に対する熱的挙動について研究した。まず始めに示差走査熱量測定法(DSC)、偏光顕微鏡による観察を行い、側鎖型液晶ポリマーの液晶性の存在、各相転移温度を決定した。次に固相-液晶相-等方相における一連の温度変化赤外スペクトルを測定し、変化部位を特定し、相転移における分子挙動の知見を得た。また主鎖部、側鎖部の固有バンドを解明し議論を行った。また密度汎関数法により計算されたスペクトルの結果から側鎖メソゲン基回りのコンフォメーションに関する知見を得た。さらにX線回折を用い、液晶ポリマーの配向パターンを観測した。 この側鎖型サーモトロピック液晶ポリマーはX線回折像からネマチック液晶であり、側鎖メソゲンだけでなく主鎖も配向し、側鎖が互いに入れ子状になって配向していることがわかった。しかし二次元的に配向しているのではなく、三次元的に複雑に配向していることが示唆された。DSCの吸熱ピーク強度がスメクチック液晶に近いことから一様にネマチック液晶ではなく、局所的にスメクチック液晶構造をとっていることが示唆された。また剛直な主鎖の影響で側鎖の運動が阻害されるために液晶性が低いと考えられた。X線回折の温度変化実験より主鎖部は側鎖部よりも低い温度領域でしか配向しないことがわかった。これは側鎖の運動が主鎖の配向を妨げることが原因であると考えられる。 温度変化赤外スペクトルより2種類のC=0の状態が存在することが示唆された。また骨格主鎖部と側鎖メソゲンのフェニル環の伸縮運動を見分けることができた。フェニル環の伸縮振動領域(1540-1410cm^<-1>)とエーテルのC-0-C伸縮振動領域(1350-1150cm^<-1>)の二次元相関赤外スペクトルからこれらのバンドの帰属を行った。密度汎関数法を用いることにより赤外スペクトル-構造相関について知見が得られ、たとえばC-0結合回りのコンフォメーションの温度変化などが明らかになった。また異時相関赤外スペクトルにより主鎖部と側鎖部の配向に温度的なずれがあることがわかり、X線回折パターンと温度変化スペクトルから側鎖は主鎖よりも高い温度域から配向することがわかった。二次元相関偏光赤外-X線回折による解析をR_2,R_3,R_4について試みた。
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