研究概要 |
今年度は、生体物質として重要なピリジンの誘導体である2-フルオロピリジン(FP)-水及び2,5ジフルオロフェノール(DFP)-水の2つのクラスターについて実験を行った。今回測定対象とした分子は通常の状態では全く存在せず、超音速自由噴流中のみで存在できる不安定な分子種ある。 FP-水クラスター分子の電子スペクトルは、これまですでに観測されていたが、今回水素結合した水の吸収スペクトルを測定することにより、水が確かにピリジンの窒素原子の孤立電子対に結合することを明らかにした。また、2個目の水分子は1個目の水分子に結合することが分かり、2個目の水が結合することによって、水と窒素原子との水素結合が強くなることが結論された。これらの結果は分子軌道計算の結果からも裏付けられ、ピリジシ分子の水素結合について、初めてミクロな立場から水素結合の様子を明らかにした。 これまでフェノール-水の水素結合体について様々な研究がなされておりフェノールに水が2個結合した分子については、水を含んだ3個のOH結合により環状構造をとるといわれてきた。今回DFPと2個の水が結合したクラスターのOH伸縮振動の赤外吸収スペクトルを測定したところ、フェノールの場合とは異なる赤外吸収スペクトルが得られ、フェノールの場合と異なる構造であることが示唆された。この構造は3個のOH基が環状になるのではなく、水分子が線状に結合した構造になるのではないかと考えているが、現在分子軌道計算を並行して行い、この構造について研究を行っている。
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