研究概要 |
昨年までに、局所射影分子軌道法(LP SCF MO)を開発し、試験的な計算の結果、重大な欠陥を見出し、その原因を明らかにした。この欠陥を克服するために、電子の非局在と電子相関効果を取りこんだ理論を構築し、プログラム開発をした。その結果、摂動的に1電子励起項を加えることによって、欠陥が克服されることを、理論及び数値的に示すことができた。この方法で得られたエネルギーは、Counterpoise法で補正されたSCFエネルギーに非常に近い値を持つ。結果として、長年の懸案であった実用的BSSE free計算法を少なくともSCF近似の範囲では作り上げることに成功した。この波動関数を用いて、双極子モーメントと四極子モーメントを計算し、これら物理量に対するBSSEの効果を系統的に調べた。エネルギーと同様に、Counterpoise法で補正した量と本方法で計算した量とは良い一致を見た。計算量は、本方法は、Counterpoise法に比し、圧倒的に少ない。 さらに、希ガス原子に囲まれた金属イオンクラスター(M^+Ar_n,M=Li,Na,K)の研究も進め、イオンと希ガス原子の相互作用と、希ガス原子同士の相互作用の、微妙なバランスで、クラスターの安定構造が決まることを明らかにした。 これらの成果を、7月末にドイツで開かれ国際会議(量子化学国際会議)とそのサテライト会議(多電子理論)において発表した。
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