研究概要 |
電子伝導性ドナー部位としてのテトラチアフルバレン(TTF)と光誘起電子移動部位及び金属配位部位としてのジピリドフェナジンを組み込んだπ-共役系が拡張した光誘起電子移動性を有する金属配位型ドナー化合物を分子設計し、新たに合成することに成功した。 鍵化合物であるハロゲン置換基を有し金属配位部位でしかも光誘起電子移動部位であるハロゲノジピリドフェナジン誘導体を合成し、二つの合成経路によって、電子伝導性ドナー部位であるベンゾTTFユニットをアセチレン架橋した金属配位型ドナー分子(1)を合成することに成功した。合成した金属配位型ドナー分子(1)の金属freeな状態でのクロロホルム中の電子スペクトルは、309,383,400,450nmに強い吸収があり、また吸収末端が600nmまで及んでいる。これは1の分子において、ジピリドフェナジン環からアセチレンを通してベンゾTTFまでπ-共役系が拡張していることを示唆している。また、1の蛍光スペクトル測定より、380nmのジピリドフェナジン部分に由来する吸収帯を励起させると、485nmに青色蛍光を示した。このことから、ジピリドフェナジン環からアセチレンを通してベンゾTTFへのエネルギー移動が起こっていると考えているが、詳細は現在検討中である。 次にドナー分子1とルテニウム(II)イオンとの錯形成を行い、ルテニウム(II)金属錯体(2)の単離に成功した。ルテニウム(II)金属錯体の電子スペクトルは、ジククロメタン中で289,313,423,463nmに強い吸収があり、また吸収末端が金属freeなドナー分子(1)と同様に600nmまで及んでいる。ルテニウム(II)金属錯体によるMLCTが新たに観測された。さらに2の蛍光スペクトル測定より、420nmのルテニウム(II)金属錯体部分に由来する吸収帯を励起させると、600nmに蛍光を示した。この蛍光挙動から、ルテニウム(II)からジピリドフェナジンへのエネルギー移動が起こっていると考えているが、ベンゾTTFへのエネルギー移動等の詳細については現在検討中である。
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