研究概要 |
8-フェニルメンチル基をキラル補助基とするピリジニウムイリドを用いた不斉シクロプロパン化反応において,β t-Bu置換メチリデンマロノニトリルを基質として用いた場合に86:14のジアステレオ選択性が発現することを既に見いだしていたが,ピリジンの4位に電子供与性のメトキシ基を導入し,溶媒を検討してアセトニトリルにしたところ,96:4にまで選択性が向上することを見いだした。また,4位に窒素置換基を導入した場合,ジアルキルの電子供与性の非常に高いものでは副反応である還元が優先して起きたが,t-BOC保護したものでは無置換体とほぼ同様の選択性でクロプロパン化反応が進行した。そして,ピリジン環窒素上の置換基がエステルでなくジアルキルアミドの場合でも反応が進行し,トランスのみのシクロプロパンが得られることがわかった。また,ピリジン環窒素上の置換基がベンジルやアリルなどでも反応が進行し,シクロプロパンがシスートランス混合物として得られることが見いだされ,さらに多様性が広がった。不斉源を回収するのできる反応系へと発展させる目的で,ピリジン上に不斉を導入する初めの試みとして,ニコチン酸クロリドとフェニルアラニンから容易に誘導できるアミノアルコールおよびオキサゾリジノンとからキラルピリジンを合成した。窒素上に不斉を持たないフェネチル基およびアルコキシカルボニルメチル基を導入し,不斉シクロプロパン化反応を種々検討したが不斉がほとんど発現しなかった。その欠点を不斉源の柔軟性にあると考えて,現在は,より強固な不斉を持つピリジンを合成中である。
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