研究概要 |
本年度「反応場の不斉を活用したエナンチオ選択的フォトクロミック系の構築」に関する成果は,以下の通りである. 1.DNA-第四級アンモニウム塩錯体フイルム中におけるジアリールエテンのフォトクロミック反応 熱不可逆フォトクロミック化合物,ジアリールエテンをDNA-第四級アンモニウム塩錯体(DNA-QAIC)フィルム中に導入し,DNAがフォトクロミック反応の媒体として利用できることを明らかにした.また,DNA-QAICフィルム中,ヒドロキシル基をもつジアリールエテンは,ヒドロキシル基がDNA-QAICと強い相互作用をもつため,分子の動きが抑制され,光環化反応が起こらなくなることが判った.ジアリールエテンは,DNA-QAICフィルム中,核酸塩基対間へのπ-πスタッキングにより部分的にインターカレートされている可能性があると考えている. 2.DNA-QAIC粉末中におけるスピロピランのフォトクロミック反応 スピロピランはDNA-QAIC粉末中,熱可逆フォトクロミック反応を示した.スピロピランは,粉末ではフォトクロミック反応を示さないが,DNA-QAIC粉末中に取り込まれることにより,DNA-QAICをマトリックスとして,フォトクロミック反応を示した為と考えている. 3.DNA-QAICフィルム中におけるスピロピランのフォトクロミック反応 スピロピランはDNA-QAICフィルム中,熱可逆フォトクロミック反応を示した.スピロピランのDNA-QAICフィルム中における熱戻り反応は,ポリスチレンPS)フィルム中より遅いことが判った.また,DNA-QAICフィルム中ではPSフィルム中に比べ,定常状態における吸収極大値が小さいことが判った.DNAに取り込まれたことにより,スピロピランは,モル吸光係数が小さくなるとともに,立体的拘束を受けメロシアニン構造に変化しにくくなった為と考えている.
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