研究概要 |
本年度研究では,(1)交差共役ヘテロトリエンおよび(2)官能基化されたカルボジイミドをヘテロ不飽和鍵中間体として用い,連続的(Tandem, Domino)に環化反応を行うことにより,効率的に位置,官能基および立体選択的に目的の複素環化合物を合成することを本方法の特色としている。 (1)交差共役ヘテロトリエンのジエン伝達ヘテロデイールス-アルダー(HDA)反応による複素環合成 この方法をさらに発展させるべく,新しい交差共役ヘテロトリエンを合成した。1つは,反応後変換可能なエステルやアミド置換基をもつジオキサトリエン(1,1-ジホルミルエチレン)。2つ目は,末端が酸素原子である交差共役オキサトリエン,3つ目は,交差共役オキサトリエンのオキサジエン部分を環状構造によりトランスに固定し,第1のDA反応の位置選択性を制御できるように設計した環状オキサトリエンである。これらを基質として用い,オキサジエン,アザジエンまたはカルボジエンとして第1のHDA反応をさせ,その後カルボニル基をアザジエンに変換後,様々なジエノフィルと第2のDA反応させることにより,この反応をバリエーションに富んだより適用範囲の広いものへと発展させた。これにより,ピラノピリジン,ピラノピリミジン,ピラノピリダジン,クロメン,ピロロジアザフェナレンおよびピロロジアザフェナレン誘導体などの含窒素多環縮合系複素環化合物が,高収率および高配向かつ高立体選択性でもって得られることを明らかにし,交差共役ヘテロトリエンのジエン伝達ヘテロDA反応の手法の有用性を示した。 (2)官能基化されたカルボジイミドの連続的環化反応による複素環合成 o-(置換アミノスルホニル)フェニル基を持つカルボジイミドを鍵中間体とした新しいタンデム環化反応をデザインした。まずアミド窒素がクムレン炭素へ分子内求核付加環化してベンゾチアジアジンが生じる。引き続き新たに生じた2位のアミノ基を近傍に配置された様々な官能基と第2の様々な反応(Aパラジウム触媒を用いたアミノ化及びアミド化反応,B超原子価ヨウ素化合物を用いたNH-芳香環脱水素環化反応,Cアルキンのヒドロアミノ化反応,D閉環メタセシス等)させることにより、様々なベンゾチアジアジン環縮合複素環化合物を合成する手法を開発した。また一方,一酸化炭素雰囲気下,触媒量のロジウム錯体・配位子存在下における,数種のアルキニル-カルボジイミド類の触媒的分子内Heterocumulenic Pauson-Khand反応を最初に開発できた。これにより短行程でピロロピロリノンやピロロインドリノンを与える新しい合成方法を開拓することができた。
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