研究概要 |
本研究では軸性不斉芳香環をフルオロフォアとする光学活性:CIEEL型ジオキセタンを創出し、偏光の発光基質となり得るか、また分子認識に基づくトリガリングの起こる発光基質となりうるかを検討し、高感度発光分析試薬としての可能性を探ろうとするものである。本研究の準備段階において種々のCIEEL型活性ジオキセタンを合成し、構造変換に対し柔軟性を持ち、かつ熱安定性に優れたジオキセタン骨格の創出に成功している。また発光種となる芳香環の構造の発光特性に及ぼす影響についてもかなりの知見を得ている。ここでは軸性不斉芳香環として1,1-ジナフチル骨格に重点を置いて検討した。ナフチル置換ジオキセタンに関してはジオキセタン環とトリガー水酸基の位置関係の発光に及ぼす影響に関してすでに詳細に調べており、ここでは発光効率に優れた位置関係である"odd"相関の6-シロキシナフタレン-2-イル置換ジオキセタンに関して1,1-ジナフチル骨格への展開を行った。1,1-ジナフチル構造への変換はジオキセタンの前駆体オレフィンの段階で2-ナフトール類との酸化的クロスカップリング反応により高収率で達成できた。前駆体オレフィンの一重項酸素酸化反応によるジオキセタンへの変換では、ジオキセタン環との間に生じる新たなアトロプ異性によりジアステレオマーがえられた。1,1ジナフチル骨格での発光特性をまず検討したところ、新たに導入したナフタレン環の置換基により、著しく発光特性が異なることが分かった。発光特性に優れた骨格を用い前駆体オレフィンの段階で光学分割を行い、ビナフチル骨格での軸性不斉にもとづくそれぞれの異性体について、一重項酸素酸化反応によるジオキセタンへの変換を行った。このようにして2箇所の軸性不斉にもとづく4種類の光学活性体すべてを合成した。これらの絶対配置の決定には至っていないが、光学活性な塩基を用いた発光分解を検討したところ4種の発光分解速度および発光最大波長に違いが認められた。この結果は光学活性なCIEEL型ジオキセタンがトリガーとなる塩基を認識していることを示すものである。
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