1-ナフチル、2-ナフチル、9-アンスリル、カルバゾール-9-イル基などを有するフェノール置換ジオキセタンを合成し、完全な均一系であるTBAF/DMSOを用いた電荷移動誘発化学発光の他、t-BuOKのクラウンエーテル錯体を塩基とする配位圏での発光分解を検討した。その結果、これらのビアリール基が微視的環境変化に応答して2つの芳香環を結合する軸まわりで配座を変化させるため、それらからの発光の色調も激しく変化するという今までに例のない現象を見出した。例えば、3-(9-アンスリル)-3-ヒドロキシフェニル置換ジオキセタンにおいては用いるクラウンエーテル錯体の大きさにより、発光は黄橙色から真紅にまで変化した。 上記の研究を基礎にして、光学活性なα-ナフチルナフトール置換ジオキセタンの全ての異性体を合成し、その発光分解について検討した。塩基として、完全な均一系であるTBAF/DMSO系、t-BuOKのクラウンエーテル錯体/ベンゼン系、そして光学活性なクラウンエーテル錯体のt-BuOK錯体/ベンゼン系の3種について調べた。その結果、前2者においては、ジアステレオマー間で発光分解速度、発光効率において若干の違いが認められたが、発光色調においてはなんら差異は認められなかった。一方、光学活性なクラウンエーテル錯体系においては、4種の光学活性体全てが異なる発光特性を示し、さらに鏡像体となる光学活性なクラウンエーテル錯体を塩基として用いた場合には、光学活性ジオキセタン全ての発光特性が鏡像体間で逆転することが明らかとなった。また、これらの発光においてはエミッターは2種の光学活性体になるが、ジオキセタンの立体化学の残像を残していることが分かった。
|