研究概要 |
脳の発育、機能維持に必須な微量元素であるMn, Fe, Cu, Zn, Seの生物無機化学的研究を展開する。方法論として、これまで我々が開発・改良してきた原子核をプローブとする多元素同時追跡の2法(ラジオアイソトープ・マルチトレーサ法と中性子放射化分析法)を適用し、これら元素について脳局所の濃度測定を行い、その生物無機化学的意義を探求しようとしている。 研究実績としては、1、原子核核現象をプローブとする2法-マルチトレーサ法と中性子放射化分析法-は両法とも多元素の情報を同時に高感度に与えることを示した。この2法が、Mn, Fe, Cu, Zn, Seの脳内での移行機序、局所蓄積機序、金属のspeciationに関する生物無機化学的挙動を検討するのに十分に利用できる可能性があることを示した。 2、「マルチトレーサ法で短期間での脳内代謝を!中性子放射化分析で脳局所の量的な分配を!知ることができる」これを利用し、加齢による脳内の変性を、これら金属の脳局所分布を手がかりに探りつつある。これら質の違うこれらの情報は,"脳局所における微量元素の生物無機化学の展開"という新たな地平を与えるだろう。 3、マルチトレーサ法が得意とする元素は、Mn, Fe, Cu, Zn, Seの中では、特にMn, Zn, Seが有望であることが分った。 4、一方、中性子放射化分析法が得意である元素は、Mn, Fe, Cu, Zn, Seの中では、特にMn, Zn,が有望であることが分った。両法に含まれるMn, Znは、脳内遷移金属としては既に重要であることが認識されている。しかし脳局所の濃度地図は未だない。これを完成するための検討を行っている。 5、現在は、正常なマウス、ラットの局所マップを作成することを目標としている。 6、14年度の成果を踏まえ、15、16年度に局所Mn, Znの濃度マップを完成させたい。 本法の「原子核をプローブとする2法」は,脳内微量元素の代謝研究に画期的なブレークスルーをもたらすだろう。
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