研究概要 |
研究課題を(1)スプラ錯体構築戦術、(2)機能性スプラ錯体開発の2点から追求した。(1)の戦術として(1)新しい自己組織化力であるオーロフィリシティーの制御と分子性Auクラスターの合成(2)配位結合の次元制御の二つの戦術を、また(2)の機能性錯体としては(3)単分子磁石(4)ミクロ反応器(5)発光性分子ワイヤーの開発を目指した。 [成果](1)オーロフィリシティーの制御と分子性Auクラスターの合成:1.特筆すべき成果としてAu_<11>(SR)_3(PR_3)_7なるSR修飾Au粒子の構造を世界で初めて分子レベルで明らかにすることに成功したことである。次にAu_<13>核Au_<25>核タラスターを結ぶ中間構造としてミッシングリングであったAu_<19>核クラスター錯体の合成に成功し、SPring 8のビームラインを使用して単結晶X線構造解析に世界で初めて成功した。2.S_3R(R=ベンゼン、トリアジン)を足場として、ここにAuPR'_3を組み込んだ(R'_3PAuS)_3R型の第一世代Auデンドリマーの合成に成功した。ホスフィン配位子PR'_3の微妙な修飾でオーロフィリシティーの制御とスプラ錯体の構造制御ができることを示した。3.(RS-Au)_2(P-R'-P)型Au二核錯体においてRおよびR'を代えることによってオーロフィリシティーの発現及び強度を制御できること、オーロフィリシティーの制御にはAu周りの立体的コンパクトさが重要である事を初めて明らかにした。4.Au(4-S-py)PR_3をcomplex as a ligand(L1)としてこれを他の遷移金属イオン(Cr,Cu)に配位させたヘテロ金属スプラ錯体の合成とX線構造解析にはじめて成功した。(2)配位結合の次元制御:主としてナノチャンネル構造を有するスプラ錯体の構築を目指して、Znをグリッド金属イオン、ピラジンカルボン酸およびビピリジン誘導(L2)を連結配位子として4種の新規グリッド錯体の合成とX線構造解析に成功した。このうち2種のスプラ錯体についてはゲスト溶媒分子を飛ばしてもホストのグリッド構造がつぶれない事、したがって代わりの小分子を取り込む「ミクロ反応器」として利用できる可能性が示唆された。(2)機能性錯体:(3)2単分子磁石:ピリジンメタノールとMnイオンから世界最小の単分子磁石である[Mn_4(pyMOH)_6(H_2O)_5](CIO_4)_4なるクラスターの合成、X-線構造解析、磁性解析に成功した。1.7Kまでの交流磁場測定からこのクラスターが単分子磁石であることが示された。(5)Ru-(bpy)とo-phen-Au-LからRu_mAu_n(bpy)_x(o-phen)_yなるAu-Ruヘテロ複核錯体の合成に成功した。最大の組み合わせでAu_4Ru_3まで合成した。これらの複核錯体はAuサイトで励起するとRuサイトから発光する。また金属数が増加するほど発光が短波長にシフトする事が判明した。(6)その他の成果:1.Mn_3(C_6F_5CO_2)_6(py)_3の巨大結晶生成に成功し、初めて二軸周りの単結晶ESR角度依存性測定と解析に成功した。2.2-ピリジンメタノール、2-ピリジンエタノールがMnに対して極めて有効な配位子であることを一連の錯体合成とX-線構造解析により明らかにした。
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