研究概要 |
[Cu(I)(dmp)_2]^+や[Pt(0)(binap)_2]錯体などのd^<10>型金属錯体について密度汎関数理論による解析を行い、基底一重項状態は擬四面体構造であるがMLCTでは平面型構造へと歪み、HOMOとHOMO^<-1>とが4500cm^<-1>以上のエネルギー分裂を生じること、そしてこの大きな分裂がd電子特有の大きなスピン軌道相互作用による異なるスピン状態間の強い混合を妨げるために、蛍光寿命が長くなり、またリン光輻射が遅くなることを理論的に明らかにした。 量子化学計算によって得られた励起状態の構造から発光スペクトルを計算し、それを実測のものと比較することで量子計算結果を評価する方法を考案し、芳香族化合物などの蛍光状態の構造を正確に決定した。また最近発光材料として注目されているIr(III),Re(I),Os(II),Zn(II),Rh(III)などのジイミン錯体のリン光状態の構造についても決定した。更にスピン軌道相互作用による一重項-三重項励起状態間の混合を取り入れることでリン光輻射速度などの光物性を計算するプログラムを作成した。[Ru(bpy)_3]^<2+>の最低三重項状態の三重項副準位の分裂幅とそれらの相対リン光輻射速度を計算したところ観測結果をほぼ再現することができた。また、fac-Ir(ppy)_3についても、室温でのリン光輻射速度は0.8x10^5s^<-1>と計算され実測値2x10^5s^<-1>に近い値が得られた。本プログラムはリン光発光材料の分子設計に役立つツールとして期待されるであろう。
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