研究概要 |
金属イオンとπ共役系配位子より構築される有機金属錯体集積体はCT錯体、電気伝導・光学物性化合物などとして興味が持たれるのみならず新規触媒モデルとして注目される化合物群の1つである。 本年度は[2.2]パラシクロファン(pcp)を用いて新規な11種のRhおよびIr錯体{[M(pcp)(diene)_2]^+(M=Rh(1), Ir(3);diene=1,5-cyclooctadiene, nbd=2,5-norbonadiene), [M_2(pcp)(diene)_2]^<2+> (M=Rh(2), Ir(4)), [M(pcp)(Cp*)]^<2+> (M=Rh (5) and Ir (6))}の系統的に合成し、そのX線結晶構造および性質を明らかにした。Rh(I)錯体1および2のpcpのベンゼン環の面間距離はmetal-freeのそれに比べ近づき、錯体2のpcpのエチレン鎖はmetal-freeと同様クロス型であるのに対し、錯体1はパラレル型へと移行することを見出した。同様に同族元素であるIr(I)についても錯体3および4を合成しその分子構造を明らかにした。またCp^*環を支持配位子としてトリプルデッカー構造を有するRh(III)およびIr(III)錯体5および6を合成し、錯体5のベンゼン環の面間距離が錯体1に比べさらに短くなること、錯体6は溶液中ではCp^*環がさらに積層したテトラデッカー錯体[Ir_2(η^6,η^6-pcp)(η^5-Cp^*)_2](BF_4)_4を形成することを見出した。本論文で明らかにした9種のpcp錯体の分子構造からpcpのベンゼン環の面間距離が3.02Å以下になると、pcpのエチレン鎖がクロス型からパラレル型へと移行することを見出した。 次年度は[Rh_2(cot)(solvent)_n](cot=1,3,5,7-cyclooctatetradiene)を前駆体とするpcpとの多層構造を有する有機金属錯体集積体の合成を試みる。
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