本研究の目的は容易に入手が可能で安価なステロイドであるコール酸をもちいて機能性分子集合体を創製することにある。平成14年度はコール酸をメソゲンとする液晶分子の開発を目的として研究を行なった。コール酸末端に種々の長鎖の置換基、アルキル鎖(〜C_<16>)、フェニル基、ビフェニル基等をエステル基として導入したコール酸誘導体を合成し、その液晶性を検討した。しかしながら現在までのところ、偏光顕微鏡による観察では、合成したコール酸誘導体はすべて結晶から等方性液体への相転移のみであり液晶性の発現には至っていない。当初はコール酸クラスレート構造に見られるようなコール酸水酸基の関与による2量体型構造をとり、棒状となり液晶相の発現を期待していた。コール酸は平面性を有するコレステロールとは異なり曲がったL字型構造をとっているのでこのような構造の分子で液晶性を発現できれば興味深い。現在、コール酸の3個の水酸基をエステル化して長鎖置換基を導入した板状分子の構築およびその相変化、カリックス[3]アレンを用いた3量体型液晶分子の創製を検討している。 また、ビシクロコーラファンを用いた包接によるアキラル分子の立体配座固定のために、新規ビシクロコーラファンの合成をおこなった。3分子のコール酸をアミド結合でつなぎ、コール酸水酸基とアミド基が認識部位となるような球状分子を設計した。現在、ゲスト分子の認識、ビシクロコーラファン内孔の不斉環境を利用した立体配座の固定化を試みている。
|