1)コール酸トリポダント型分子による分子認識:コール酸は外側が疎水性、内側が親水性のL字型のステロイド分子であるがこの特性を活かすためにトリメジン酸、シクロトリベンジレン等に3分子のコール酸を配したトリポダント型のホスト分子によるデオキシリボヌクレオシド、AZTの認識を検討した。その結果、最高でdAを結合定数5x10^5M^<-1>で選択的に認識した。これは2環性のビシクロコーラファンよりも大きな値である。AZTに対しては10^2M^<-1>オーダーの結合定数しか示さなかった。 2)ビシクロコーラファンの単結晶X線構造解析:ステロイド化合物を利用した大環状ホスト化合物のX線構造は皆無であるが、初めてビシクロコーラファンの単結晶X線構造解析に成功した。溶液中ではねじれに由来する配座異性体の混合物として存在するが、結晶はキラルでありP-ヘリシティーを有する単一のコンフォマーの集合体であることがわかった。 3)コール酸誘導体の液晶化の試み:平面分子であるコレステロールがディスコティック液晶となることはよく知られているが、L字型に曲がったステロイド分子でも液晶化による配列制御が可能かどうか検討した。コール酸の3個の水酸基による水素結合の利用による自己集合型2量体の液晶分子を創製するために種々の長鎖を持つコール酸エステル誘導体を合成した。これらの偏光顕微鏡観察を行ったが液晶の発現にはいたらなかった。 4)分子認識型液晶分子の創製:溶液中、固相中での分子認識は活発に研究されているが、液晶分子を利用してのメソフェーズでの例はほとんどない。そこでホモオキサカリックス[4]アレンを認識剖立でありかつコア部分として持つ柱状の超分子2量体型液晶ホスト分子の創製を目指した。ジアミンを利用して配列制御を行うことにより液晶化に成功した。
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